弁護士 和田 暁斗(みぎわ法律事務所) > 記事一覧 > 取引先が倒産した際の債権回収方法
取引先が倒産したとの知らせを受けたときは、債権を全額回収することは困難であるものの、考えられるあらゆる手段を尽くして、少しでも多くの債権の回収を目指します。
最初に行うことは、まず、取引先に関する正確な情報の収集です。取引先本社や事務所などを訪問したり、代表者や担当者、他の取引業者と連絡したりして、以下のような情報の収集に努めましょう。
・倒産した事実
・債権の種類(例:売掛金、手形債権など)・金額
・代表者の所在
・担保物件や納品済み商品の所在
・転売先の確認
・取引先に対する債務・手形の有無
・担保・保証人の有無
・他の債権者の動向
仮に倒産事実が判明した場合は、「再建手続き」か「清算手続き」のどちらかも確認しましょう。再建手続きでは、法的手続きを通じて債務を減免するなどして会社の再建を図る手続きで、この場合だと倒産会社は消滅しません。そのため、今後の取引継続を検討したうえで回収対応を行うことになります。他方で、清算手続きでは、会社財産を換価するなどして資産・負債をすべて清算する手続きで、倒産会社は最終的に消滅することになります。この場合だと回収対応に注力することになります。
次に、具体的にどのような手段で債権回収を行うかを検討しましょう。取引先が倒産した場合でも行える債権回収方法として、次のものが考えられます。
(1)相殺
取引先との間で対立する債権債務が存在している場合、両者を同じ金額分だけ共に消滅させて債権を回収する方法です。例えば、取引先に対して100万円の売掛金と50万円の買掛金を有している場合、両者を相殺して、売掛金50万円を消滅させる代わりに、買掛金50万円の負担がなくなります。
(2)担保権の実行
取引先に対する債権に担保が設定されている場合、その担保権を実行して債権を回収する方法です。基本的に破産手続き等の制約を受けずに実行でき、他の債権者(一般債権者)に優先して回収できます。民事再生では、担保権を「別除権」として取り扱うことになります。ただし、会社更生手続きでは、手続き開始後に担保権の実行が禁止・中止されるため、担保権の実行を検討する際は、倒産手続きの種類や担保権の種類を確認しましょう。
(3)差押え(強制執行)
取引先の財産を差し押さえ、その財産から満足を得るという方法もあります。強制執行を行うには「債務名義」が必要で、確定判決や調停、和解、仮執行宣言付の支払督促などで得られますが、最も簡便な方法はあらかじめ契約書を公正証書で作成することです。一定額の金銭の支払いを目的とする請求で、債務者が債務を履行しない場合には強制執行の対象となる旨の約款(「執行認諾約款」あるいは「執行認諾(受諾)文言」)を設けることで、訴訟などを行わずとも強制執行が可能です。
もっとも、破産手続き開始後では強制執行の効力が消滅するため、強制執行を検討する際は、取引先が現在、どの段階にあるのかを十分に確認する必要があります。
(4)商品の引き上げ
本来の給付(売掛金など)に代えて、他の給付(商品など)を行うことにより債務を消滅させる方法がとられることもあります。これを「代物弁済」といい、取引先との間で契約を締結し、商品等を引き上げます。契約は口頭でも成立しますが、後でトラブルを防ぐために必ず契約書を作成しましょう。また、仮に取引先の同意なく商品を引き上げた場合、損害賠償や窃盗罪に問われる可能性があるため、注意しましょう。
引き上げる商品が自社製品であれば、それほどトラブルにならずに済みますが、他社製品の場合は慎重を期す必要があります。取引先が他社との間でまだ売掛金を残している場合、動産売買の先取特権が行使される可能性がありますし、詐害行為取消権によって代物弁済契約が取り消されるリスクもあります。
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